※写真:ロイター通信
大災害、そして大事故と、痛ましいニュースが続き、国中が震撼した2024年の幕開け。
地震の被害は甚大で、その惨状が連日報道されています。
航空機事故においては、全貌は見えてきたものの、原因の解明にはいまだ至っておらず、迂闊なことは言えませんが、乗客乗員379人全員が脱出できたことは不幸中の幸いでした。
世界のメディアからも称賛されている奇跡の脱出は、日頃リーダーシップを、中でも『権限によらないリーダーシップ』を研究テーマの一つとしている者としては、その背景が非常に気になるところです。
今日は、この脱出について、リーダーシップの観点から考えてみようと思います。
本来ならば、権限を持つ絶対的リーダーである機長からの指示に従うべき状況でした。しかし、ニュース映像を見る限り、機長との交信は不能だったようです。ということは、『権限のあるリーダー』が不在の中、必然的にたった8人の客室乗務員が367人もの乗客を動かさなければならなくなったわけです。
8つの脱出口のうち、どれが安全か、外の様子が正確に把握できない中での判断が迫られる。間違って開けてしまえば、そこから炎が機内に広がってしまう。乗客の恐怖と機内の煙と熱気は限界に来ている。もちろん、客室乗務員自身にも、同様に己の命の危険がある。「落ち着いてください」と懸命に乗客に言葉がけをする。と同時に、大声で叫びながら、客室乗務員同士で情報共有をしあう。そこにはもはや上下関係はなく、『乗客を生きて脱出させる』という共通の目標だけが存在し、誰もがリーダーとなっていただろうことが想像できます。
そんな中で、注目すべき点は、客室乗務員だけでなく、乗客までもがリーダーシップを発揮するようになっていたことです。乗客が他の乗客に対して放った、「大丈夫大丈夫!乗務員の言うとおりにして」という言葉。それは、乗務員と乗客という枠を超えて、「生きて脱出しよう」という確固たる目標があったからこそ生まれたリーダーシップだったと思います。
もちろん、そうなったことには、
・緊急時だから
・乗客の中に、もともとリーダーとしての意識が高い方がいた
などの条件があったのかもしれません。
けれども緊急時だからといって、命がかかっている瞬間に、ほとんど見ず知らずの乗務員の判断に身を委ねることが、果たして誰にでもできたことなのでしょうか。おそらく、飛行機に搭乗した時から事故発生までの間に、乗客の中に乗務員に対する【心理的安全性】が生まれていたのだろうと思うのです。それが土台にあったからこそ、突如生まれた目標に向かって、乗客の中からもリーダーシップを発揮する人が現れ、「大丈夫大丈夫!」の言葉がけに繋がったのではないでしょうか。
これらはあくまでも私の憶測ではありますが、いずれにせよ、8人の客室乗務員の皆さんの働きは、日頃の訓練の賜物であり、称賛に値することは間違いありません。
色々と考えさせられるニュースばかりで、国全体が心なしか落ち着かないように感じるのですが、いざという時に自身を信頼できるよう、気を引き締めて過ごしていきたいと思います。