Mさんは、経営者としてもビジネスマンとしても、とても経験豊富な方。
彼は今、社員でもない『若手』 Kくんを育てています。話を聞く限り、特に優秀というわけでもなさそうだけれども、若いなりに頑張っているから、独り立ちする手助けをするため面倒をみてあげているのだとか。
実はKくん、一度“やらかして”います。
昨年、Mさんが長くお付き合いしているクライアントの担当をKくんに任せたのだけれど、大失敗したという経緯がありました。不安はあったものの、そのリベンジということで、今年もKくんに任せたのだと。
しかし・・・Kくんは、またしても“やらかして”しまいました。
さすがにクライアントからは、Kくんを担当から外して欲しい、と言われたそうで、Mさんはその後処理に忙殺されていました。
KくんはMさんに、何度も何度も謝るそうですが、Mさんからしたら、謝るのは後回しで、今は請け負った仕事を終わらせ、クライアントに納めることが最優先。長年かけて育ててきた信用に綻びが生じている。一刻も早く修復しなければならない。
Mさんいわく、「負け戦さは絶対に勝ちにはならない。とにかく生き延びることだ。それなのに、味方同士対立してどうするのだ」と。「誰のミスでもいい、誰の責任だって構わない。それは後で検証すればいい。今は結束して事にあたろう。反省や謝罪は生き延びてからだ、死んじまったら反省もクソもないだろう」。。。
おっしゃる通り。そうしてMさん、信用回復に全力で取り組まれ、クライアントとの契約は来年以降も継続になったそうです。
ここで、コーチの視点から見てみましょう。
事が起きてからのKくん、本来の目的を見失っているようですね。「クライアントに満足していただく」ことを目指していたはずなのに、「Mさんを怒らせないようにする」こと、つまり、おのれの保身に走ってしまっています。これ、よくある話です。
そもそも、昨年のリベンジをする意味合いもあったはず。Mさんの顔をこれ以上潰さないよう、入念な準備があって然るべき。そこで大失敗してしまった。クライアントへの信用回復を本気で考えているならば、何よりもクライアントを第一優先するはず。ここで保身に走るならば、クライアントに対するKくんの意識が低かった、と思わざるを得ません。
しかしながらMさん、さすがはベテラン経営者。Kくんへの怒りもあったかもしれませんが、クライアントへの態度と姿勢をKくんに示し、「背中で見せる」を体現されました。
きっと、Mさんの中には、Kくんが失敗することは、どこかで想定はされていたのでしょう。いざとなったら自分が尻拭いするという覚悟を持って、大切なクライアントの元に送り込んだのです。そうまでして、MさんはKくんに、「失敗から学ぶ」を経験させた、ということかもしれません。そして、想定内とはいえ本当に失敗してしまい憔悴しているKくんに、怒るのでなくとにかく火消しをすることで「大丈夫だぞ」という【心理的安全性】を与えました。
そこには、見栄やプライドは関係なく本来の目的を決して見失わない、Mさんの『権限のあるリーダー』の理想の姿がありました。最近、私自身は『権限によらないリーダーシップ』にシフトしがちでしたが、従来のリーダーの在り方を見せていただいたようでした。
Mさんのカッコ良すぎるリーダー、しかと拝見しました!!
それにしても、Kくん・・・社員でもないのに、これほどまでの経験をさせてくれるMさんの『愛』を、本当に分かっているんかいな。。。そんな環境にいさせてもらっていることに感謝して、さらに成長されますように・・・!!