なぜ、栗山監督が『理想の上司』なのか

新年度になり、新リーダーになられた方にお届けする『リーダー研修』の準備をしているのですが、リーダー像のモデルに、WBC優勝の感動が記憶に新しい栗山英樹監督を取り上げてみようと考えています。

栗山監督のインタビューや記者会見などで、いくつかキーワードがありましたが、ビジネスコーチの視点で、私が注目したのは次の4つです。

「選手を信じる」

私たちがよく使う『信じる』は、実はあまり根拠はなく、相手に責任を委ねてしまっていることが多いように思います。「やればできると信じてる」とプレッシャーをかけたり、「絶対に裏切らないって信じてる」なんて呪縛めいた『信じる』で牽制したり。栗山監督の場合はどうでしょうか。「超一流選手だもん。そりゃ信じられるよね」という人もいるでしょう。けれども、実際には不調や故障など不安要素は出てくるもの。日頃から、それぞれの状態、特徴、性格などをしっかりと把握し、ベストなタイミングを見極めた上での『信じる』には、十分な根拠とご自身の責任を感じました。

「〜という中で」

栗山監督の話でよく聞かれたフレーズです。相手に何かを伝えようとするなら、まずその目的や背景、プロセスなどを先に伝えること(=セットアップ)で、理解やイメージがしてもらいやすくなります。栗山監督は口癖のように使われていたので、セットアップすることが、日常の会話や指導などで習慣化されているのかもしれません。イメージがしやすい明確な指示は、リーダーとして大事な要素だと思います。

「宿題を持ったまま終わるよ」(村上選手への言葉)

人はスッキリした時より、モヤモヤしている時の方が次の行動を起こしやすくなります。アドバイスや説得などで早く結果に繋げようとするのでなく、あえてモヤモヤ(宿題)を持ち帰らせ、自分で乗り越えさせるのは、WBCの枠を超えて長い目で『見守る』ことと、相手がさらに高みを目指せると『信じる』ことができてこそ。それができる栗山監督は、素晴らしい指導者だと思いました。

「話せないことばかり。でも行間にある感情を受け取れれば」 (サッカー日本代表、森保監督との対談で)

言葉そのもので判断するのでなく、その裏側にある感情を掴んだり、慮(おもんぱか)ったりすることは、コミュニケーションで最も大切なことだと思います。言葉と言葉の間に生まれる『何か』は、ぼーっとしていたら見逃してしまいます。常にアンテナを張り意識し、分かって欲しい『何か』をしっかり受け取ってくれる人には、人は安心感を抱くものです。

他にも、取り上げたいワードはたくさんあるのですが、様々な要素から見えてきたのは、栗山監督は、『相手の感情をとても大切に扱うコミュニケーション』をされる方だということです。それは私自身も、ビジネスコーチとして、人として母として、一番大切にしていることです。

どうやら、今後のリーダー研修では、リーダー像のモデルとして、栗山監督が定番になりそうです。

※Photo by スポニチ

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